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おれブログかく。

ハードボイルド?

「ミシン」、「鱗姫」 嶽本のばら

 若い女性に人気のある作家の本を読むというのは、そうした尺度からすると、かなりの冒険ではあります。

 それでも読んでみたのは、作者のインタビューで、「乙女とは、ハードボイルドなのです。」という発言を見たからでした。

 感想は結構辛辣かもしれません。ファンの方はご遠慮ください。




 作品の中の女性は、それほどハードボイルドではありませんでした。それぞれの登場人物はストイックに自らの矜持に対して殉じてはいますが、その矜持があまりにしっかりし過ぎているように感じます。

 ハードボイルドは、もっといい加減で、思いつきで動くものだと思います。別にほうっておけばいい事件に無駄に首を突っ込んだり、賞金欲しさに好きになった女性を警察に突き出したり、いい加減なものです。

 さらに言えば、ハードボイルドは出口を持ちません。どんな事件に遭遇しても、結局最後はいつも通りになるものだと思います。たとえば自殺などという決着がつくのなら、誰もハードボイルドになんてならない(ブコウスキーのpulp! は殺されて終わるけど)。

 自分が上にも下にも行けないのがわかったとき、現状を肯定する心の殻のひとつがハードボイルドなのでは。

 そんなことを考えると、それなりに(一瞬でも)輝く時間を与えられたこれらの本の乙女たちは、ハードボイルドよりは幾分かましだったのではないでしょうか。