手すり

おれブログかく。

 何もなさそうでそれなりに何かあるのがわたしの生活の基本的なトーンです。それで何があるかというと今日は、隣の家のおじさんと仲良くなったのです。

 このおじさんの風体は「レモン・ハート」のマスター、もしくは「3丁目の夕日」のキャラクターそっくりで、一度など手に「3丁目の夕日」を持っているのを見たときは、自分の目を疑いました。

 このおじさんとはこれまでも顔をあわせると挨拶はしていたのですが、今日は

 「あなた、音楽は聴くの?」

 と聞かれたのです。夜中のボリュームがうるさいのかと一瞬たじろぎましたが、聞きます、と、そう答えました。すると、さらにおじさんはジャンルを聞いてきたのです。正直、見た感じからして、わたしと同じジャンルを聞く人には見えません、いえ、演歌以外を聴いているとは思えないのです。何せ今日のおじさんのファッションは短パンにランニングシャツ、浮き出た乳首がアクセントとなった、完全夏ファッションなのです。

 おじさんは強気に、「歌謡曲?ロック?クラシック?」と、質問を続けました。そのなかでおじさんに合わせるとすれば、「歌謡曲です」という答えになります。

 するとおじさんは、「あなた、通だね。」と。さらにおじさんは、

 「これから、時間があったら音楽聴きに、うちに来なさい、いい装置があるから。」

 装置?装置?オーディオではなくて?


 おじさんは近所に外出のようでしたので私も家にいると、ご丁寧に迎えに来てくれました。一緒におじさんの家へ。

 すこし待たされて、案内された部屋は、想像を絶していました。

 まず目の前にはスピーカー。3段に積まれたスピーカーは幅がおよそ60センチ、高さは150センチほど。それが左右にあり、それを多い尽くすかのようにCDの山。おそらく1000枚単位です。ジャンルも半端ではありません。棚が一つクラシックで多い尽くされている一方で、足元の山には「Do As Infinity」と「一青窈」があります。中森明菜も。でもバッハのボックスもあり。

 人の座っていられる場所は椅子一脚だけ。スピーカーの焦点となるところです。その席の足元にはターンテーブルがあり、小さなちゃぶ台ぐらいの大きさがあります。

 絶句していると、椅子に座るように言われ、まだ音のでていないスピーカーに圧倒されていると、夏川りみの曲がかかります。ぶっ飛びました。そのあと、中森明菜「スローモーション」を題材にCD、DVDオーディオの聴き比べをさせてくれました。
 一番悶絶したのはEaglesの「Hotel California」で、すごい事になっていました。わたしの聞いていたものとまるで別物です。

 「オーディオ仲間を増やしたいんだよ」というおじさんは、わたしが夜な夜な掛ける音楽を聞きつけて誘ってくれたのだと思います。

 おじさんのオーディオは「狭い部屋で歌声をきれいに出す」というテーマで組まれているらしく、今日掛けてくれた音楽はすべてボーカル入りのものでした。

 もはや、装置。恐るべし、レモンハート

 完全に気圧されたわたしに、「また来なさい、今度は聞きたいCDを持ってくるといい。」と言ってくれたのでした。


 正直、オーディオもすこし興味がないことはないのですが、恐ろしくディープな世界なのであっち側に行かないよう気をつけていたのです。お金がいくらあっても足りないでしょうし。

 悪い病気がまた、出なければいいのですが。


 次行くときには、BeachBoysとElton Johnのライブ盤を持って行きます。