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ソフト君という名前にピンと来る人は少ないようです。
ガリガリ君の弟で、やわらかいアイスです。銀色の袋に太った子供の絵が描いてあって、「僕、ガリガリ君の弟のソフト君です。よろしく」と書いてありました。
誰に聞いても知らないと一笑に付されてしまいます。たしかにあったのに。
自分の兄と、自分自身を君付けで呼ぶのはどうかと思います。でも確かにありました。
おそらく15年ぐらい前です。世紀末的なにおいのするアパートの、崩れ落ちそうな階段で友達と食べました。
そんなにむかしのことでも、銀色の袋と、そこに描いたソフト君の絵と、ソフト君を食べたアパートの崩れ落ちそうな階段は忘れていません。
みんな、覚えてるけど、私を担ぐために忘れたフリをしてるのだと、思ってます。