手すり

おれブログかく。

 「ランド・オブ・プレンティ」
 ヴェンダースの新作。少しがさがさした絵の感じがとても好きで、彼の作品はけっこう観てる。ロードムービーじゃないかと思いきや、やっぱりロードムービーだった。

 主人公は聡明な女の人だけど、その伯父さんも出てくる。

 伯父さんは退役軍人で、現役時代の部下をこき使いながら、今でも自発的に街を回って諜報活動をしている。普通の人から見たらイカれてるようにも見える。それを見守る姪。二人は小さなたびに出て、それで帰ってくる。

 伯父さんが諜報活動に精を出すのは、ヴェトナムで傷ついた結果、軍隊から離れられなくなったから。自分の気持ちをいつも戦時下にして、ヴェトナムを続けようとしてる。だけどその「ひとりヴェトナム」に小さな穴を開けたのが姪との旅で、今後はおっさんの生活も少しぐらいは変わるのだろう。

 観て思ったのは、アメリカについての映画かもしれないけれど、伯父さんの視点からすれば、「アメリカ(=世界)対自分」の話とも見えるということ。伯父さんはアメリカの中に自分がいると思い込んでるみたいだけど、自分の中にアメリカがあった。伯父さんはそのアメリカを戦時下として飲み込んでいた。でも、他の人はまた違うアメリカを持ってる。たとえば弱者が貧困にあえぐ国とか。

 世界に対する解釈は人さまざま。世界は自分と無関係に存在して、自分で価値を与える必要があるから。でもそれは、逆に言えば、世界がどういうものなのか自分で決めることができるということでもある。思っている以上に、世界は自分次第で決まる。