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たまには都会の空気を肌身に感じるべく、山手線をたしなむ私ですが、車内のテレビ広告には、いつもの通り劇団四季のコマーシャルが流れていました。演目は「魔法を捨てたマジョリン」とか。「マジョリン」という人はおそらく魔女で、その人が魔法を捨てると言う話なのでしょうが、心配です。「マジョリン」が魔法を捨てたら「リン」しか残らない。
ホテルのバー。魔法を捨てたリンは職場の後輩とカウンターに並んで飲んでいる。
(後輩:タバコの火を消しながら)
後輩「あの、リンさんに聞きたいことあるんですけど、聞いていいですか?」
(リン:指でカクテルの氷を回している)
リン「いいわよ。なに?」
後輩「あの、リンさんって、昔、魔女だったって、本当ですか?」
リン「誰から聞いたの?」
後輩「いや、誰ってわけでもないですけど。」
りん「そう・・・。うん、むかし、ちょっとだけね。」
(後輩:リンの方へ向き直る)
後輩「すごいじゃないですか。なんでも魔法でバシバシッと。」
リン「魔法っていっても、万能じゃないのよ。私ができたのは、生卵をゆで卵にするような、その程度の魔法なのよ。」
後輩「そうですか。・・・でも、やっぱりすごいです。」
リン「そう?ありがとう。でも、やめちゃったのよね。」
(リン:カクテルを飲み干す)
後輩「どうしてですか?」
リン「どうしてかなあ、ひと言で言えば、醒めちゃったのよね。若いときはどんどん新しい魔法を覚えて、いろいろ人の驚くようなことをして、そういうのが楽しかったんだけど、ある日、なんだか魔法を使ってあれこれやっても、自分自身は空っぽのままのような気がして。」
後輩「そんなもんなんですかね。」
リン「そんなもんみたい。それで、このまま年を取るのはいやだなって、そう思ったときはもう30越えてて。今更っていう気はしたけど何とかしなくちゃいけない気がして。それで転職したの。」
リン(バーテンに向かって)「お代わり、ください。」
後輩「そうなんですか。」
リン「そうなの。30過ぎの女がばたばたして、おかしいでしょ?」
後輩「そんな。おかしくなんてないですよ。」
とか。こんなのを劇団四季でぜひ。