■
よく「一度言ったらわかるでしょ。二度は教えないよ。」と言う人がいますが。
本当に本当なのかと、思うのです。
それってすごく厳しいと思うのです。言われると軽くへこみます。
一度言ったって何度言ったって、覚えられないものは覚えられなくて、かつて教えてもらった事実は覚えているけれど、内容を忘れたなどということはよくあります。そうした自覚がありながらも再度聞かざるを得ない状況と言うのは、けっこう聞くほうにとっても十分気まずさを感じてのことなのです。
そういう気まずさを感じている中、おそるおそる聞いて「一度で覚えろよ」と言われるとやっぱりーというなんというか、侘び寂びというか。メローな気分になってしまいます。
「一度言ったら二度と言わない」方式のメリットはいったいどこにあるのかわかりません。考えられるのは「聞けばいいやと思って覚えないやつ」という人たちに対しての防御策、というのがありますな。が、そんな人は確率的にあんまりいないのでは。すくなくとも、「一度言ったら二度と言わない」方式を採用する人のすべてが「聞けばいいやと思って覚えないやつ」に出会った経験からこの方式を採用しているとは思えません。とすると、なんども教えるのが面倒と思っているか、なめられないように気をつけてるかぐらいしか、この方式の採用理由が見当たりません。
教えるのが面倒だったら、それをきちんと表明するべきだし、なめられないように気をつけようというのなら、そこで気を張るのでなく、教えるという作業の中できちんと後進の前を歩き続けられるように自分で努力するのが筋じゃないかと。
そもそも「一度言ったら二度と言わない」というスローガンは指導する立場ではなく、後進がもつべき、つまり「一度聞いたことは二度と聞かない」という形であるべき。
十分に価値のあるスローガンがいつの間にかその所有者が変わっていびつな形で力を持ってることはよくあるなあと。
同じ言葉でも誰が発するかによって、正しかったり正しくなかったりするのだなと、最近思うのですよ。